7日に行われた高校サッカー選手権準決勝、市立船橋と四日市中央工が勝利し、決勝の舞台に立つ権利を得た。ただ、インタビュールームで大きな話題をさらったのは市立船橋に1-2と惜敗した大分、朴英雄(パク・ウンヨン)監督の会見だった。

7度目の挑戦で、初の国立の舞台に足を踏み入れた朴監督は、元韓国陸軍大佐という異色の指揮官だ。試合中にはオーバーアクションで選手にゲキや怒号を飛ばす場面が多く見られ、2004年には審判へ暴言を吐いて1年間の公的職務停止処分を受けたほどの“鬼軍曹”だが、会見になると独特の日本語、そしてぶっちゃけトークで場内に笑いをふりまいた。以下、メモから抜粋した。

「今日については本来のサッカーができたわけじゃない。ハッキリ言って、攻撃に関しては見せられたものがなかった。ディフェンスに関しては、市船さんを相手に見せられた部分があるかとは思いますが」
「サッカーはショーじゃないけど、お客さんに対して見せるものですから」
「(終盤、ボールキープでリードを守りに入った相手には)市船の(朝岡)監督さんに試合終わった瞬間に言いましたわ、『そんなんせんで~!見てる人、びっくりするわ~!』って」
「(先発出場したFW小松について)主力のケガがあって、9番(梶谷)を中盤にさげなきゃならなくなって、人が足りなくなったから。(小松は)アイツ、ナルシストやから。途中交代で生きるんだけど、今日は先発で行けるなと感じた」
「私は洋服作る人と一緒。お客さんにポケット小さくしてほしいと言われたら直します。でもその直した部分も結局は自分のデザインなんです」

そして大分高のチーム環境について触れると、まさに“絶口調”に。

「大分では一番うまい子はトリニータ(ユース)に流れてしまうので、うちの選手は2.5番目クラスの選手。中学時代の県トレセン選抜だって1人しかいません。その『2.5』を『3』にするか『2』にするかが大事なんです」
「私、今考えてるんですけど、単行本出そうと思っているんです。税込920円で。弱いチームを強くする方法を書いた本。本ができたら皆さんにもお配りしますわ。税込920円ですが。県大会ベスト8以上のチームには売りませんけど」
「『2.5番目』と言っても、日本人選手はシンプルに効率よくやろうと『Brain』をちゃんと使おうとします。韓国のサッカー選手はねぇ……、あ、こんなこと言っちゃダメか」

と、あらぬ方に脱線しながらも、ホロリとさせる話も。

「(7度目の挑戦で、念願の国立に来られたことに)私は日本人じゃないけど、国立のピッチが夢だった。私の電車の線路は、終着駅が国立だった」

かと思えば、

「ウチ(大分高)、私立なんですけど、国立来ちゃったんです……。私、意外とこういうのも好きで」

『探偵!ナイトスクープ』の間寛平探偵を想起させるようなイントネーションと、少しとぼけた話しぶり。歴戦の記者も笑わせてしまう間合いだった。

ただ、ユーモアばかりではない。

「練習の半分はインサイドパス。色んなジャンルを教えてる。強い弱い、ストレート?曲げるか?それともチップか?パスを『出す』ではなく、『置く』と指導している」
「(『走りまくるサッカー』のイメージが強いが)毎日走らせてるわけじゃないし、走りのトレーニングは17分間だけ」
「選手には『サッカーを運営する』というイメージでプレーしてほしいんです。そのためには『Brain』を大切にしてほしい」
「力が劣る場合は、あえて距離を保っていかなくていいよ、と。その要素を総合していくと、私の言っている『フリーマンサッカー』になるかと」

明確な信念のもと、1回戦では10-0の大勝を飾るなどインパクトを残した朴監督。本人は『引退宣言』したが、経歴や改良版・キック&ラッシュの戦術も相まって、『日本版マガト』的な地位を築くのも見てみたい。

※選手表記、チーム表記はQoly.jpのデータベースに準拠しています。


筆者名 茂野 聡士
プロフィール 某蹴球雑誌にて修行中の身。グアルディオラ現役時代からバルサに傾倒したせいか、実際プレーすると『捌くだけ』で怖さはないタイプ。バルサの近年の無敵ぶりに、10年前現地で見た暗黒時代も恋しいという一面も。ツイッターは癖のあるつぶやきなので、注意が必要。
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