■1973年のフットボール

55 名前:   投稿日: 03/02/20 00:33 ID:OYz3fGkP

フットボール観戦ガイドブック「ノー・サスペンド」の序文はこのように語っている。

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「あなたがフットボール観戦から得るものは殆んど何もない。アンフィールドの真冬の潮風に 数時間吹きつけられて真っ赤になった鼻と、その鼻も噛めそうにないしわくちゃのチケットの半券だけだ。失うものは実にいっぱいある。歴代首相の銅像が全部建てられるくらいの銅貨と(もっともあなたにマーガレット・サッチャーの銅像を建てる気があればのことだが)、取り返すことのできぬ貴重な時間だ。

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あなたがゴールネットの後ろで不毛な消耗をつづけているあいだに、あるものはプルーストを読みつづけているかもしれない。またあるものはカウチ・ベッドの上でガール・フレンドと『モンティ・パイソン』を観ながらヘビー・ペッティングに励んでいるかもしれない。そして彼らは時代を洞察する作家となり、あるいは幸せな夫婦となるかもしれない。

ツꀀ

しかしフットボールはあなたを何処にも連れて行きはしない。網膜にうつるのは右から左へ転がるボールだけだ。転がる、転がる、転がる‥‥‥、まるでフットボールそのものがある永劫性を目指しているようにさえ思える。

ツꀀ

永劫性について我々は多くを知らぬ。しかしその影を推し測ることはできる。フットボール観戦の目的は、自己実現にあるのではなく、自己変革にある。エゴの拡大にではなく、縮小にある。分析にではなく、包括にある。

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もしあなたが自己表現やエゴの拡大や分析を目指せば、あなたは警備員のつれたジャーマン・シェパードに容赦なき報復を受けるだろう。

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良きゲームを祈る(ハヴ・ア・ナイス・ゲーム)」

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■なつかしのリーズ

23 名前: 投稿日: 03/02/18 03:33 ID:yz4F2+sG

「ベナブルズ君、グラスもう一個持ってきてくれない?」

「いいですよ。でも何するんですか?」

「これから二人でリーズのお葬式するのよ」

リズデイルさんは言った。「淋しくないやつを」

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リズデイルさんはまずマネージャーの「オリアリー」をとても綺麗に静かに弾き出した。

ツꀀ

「さて、酔っ払っちゃう前に何人売れるかな。ねえ、こういうお葬式だと淋しくなくていいでしょう?」

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リズデイルさんはまずマネージャーの「オリアリー」をとても綺麗に静かに弾き出した。

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「さて、酔っ払っちゃう前に何人売れるかな。ねえ、こういうお葬式だと淋しくなくていいでしょう?」

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リズデイルさんはプレーヤーに移り、「ファーディナンド」を売り、「ロビーキーン」を売り、「ファウラー」を売り、「ダクール」を売り、「ボウヤー」を笑いながら売り、「ウッドゲイト」を売った。僕はマッチ棒を七本並べた。

ツꀀ

「七人」とリズデイルさんは言ってワインをすすり、煙草をふかした。

「この人たちはたしかに人生の哀しみとか優しさというものをよく知っているわね」

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リーズが死んでしまったあとでも、リズデイルさんは僕に何度も手紙を書いてきて、それは僕のせいではないし、誰のせいでもないし、それは雨ふりのように誰にもとめることのできないことなのだと言ってくれた。

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■パレルモお家芸

107 名前: 投稿日: 03/02/24 03:31 ID:9OYHriYZ

ある冬の朝、1月の始め、ザンパリーニさんから長い手紙が届いて、そこには僕を解任したいと書いてあった。あなたのことはずっと好きだし、今でも好きだし、これからも・・・云々。

ツꀀ

要するに解任したいということだ。新しい監督を呼んだのだ。僕は首を振って煙草を6本吸い、外に出て罐ビールを飲み、部屋に戻ってまた煙草を吸った。それから机の上にあるHBの長い鉛筆の軸を3本折った。べつに腹を立ててたわけじゃない。何をすればいいのかよくわからなかっただけだ。

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それからしばらくのあいだ、僕はまわりのみんなから「ずいぶん明るくなったね」と言われた。人生ってよくわからない。

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■かつて、インテルがどうしようもなかったころ

157 名前: 投稿日: 03/02/28 18:05 ID:dC0Hvm1z

「だから僕としてもサネッティさんに幸せになってもらいたいんです」

とエムレはちょっと赤くなって言った。「でも不思議ですね。あなたみたいな選手ならどのチームに行っても幸せになれそうに見えるのに、どうしてまたよりによってモラッティさんみたいな人とくっついちゃうんだろう?」

ツꀀ

「そういうのってたぶんどうしようもないことなんだよ。自分ではどうしようもないことなんだよ。モラッティさんに言わせれば、そんなこと君の責任だ。俺は知らんってことになるんだろうけどね」

ツꀀ

「そう言うでしょうね」とエムレは同意した。

ツꀀ

「でもね、エムレ君。僕はそんなに頭のいい選手じゃないんだ。僕はどっちかって言うと馬鹿で古風な選手なんだよ。システムとか責任とか、そんなことどうだっていい。練習して、好きなチームで毎週プレーして、たまに勝てればそれでいいんだ。それだけなんだ。僕が求めているのはそれだけなんだよ」

ツꀀ

「モラッティさんが求めているのはそれとは全然別のものですよ」

ツꀀ

「でも人は変わるよ。そうだろ?」とサネッティさんは言った。

ツꀀ

「オーナーになってセリエAの荒波に打たれ、挫折し、大人になり・・・ということ?」

ツꀀ

「そう。」

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「それは普通の人間の話です」とエムレは言った。「普通の人間だったらまあそういうのもあるでしょうね。でもあの人は別です。あの人は我々の想像を超えて金を持っている人だし、毎年毎年選手補強をしてるんです。そして結果が出なければもっと無駄な投資をしようとする人なんです。他人にうしろを見せるくらいならナメクジだって食べちゃうような人なんです。そんな人間にあなたはいったい何を期待するんですか?」

ツꀀ

「でもね、エムレ君。今の僕は待つしかないんだ」とサネッティさんは テーブルに頬杖をついて言った。

ツꀀ

「そんなにモラッティさんのこと好きなんですか?」

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「好きだよ」とサネッティは即座に答えた。

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■ガスコイン

37 名無しが急に来たので[sage] 08/04/11 21:32 ID:sdVo7DHs

僕はFAに電話をかけ、W杯にどうしてもいきたいんだ。

話すことがいっぱいある。話さなくちゃいけないことがいっぱいある。

世界中にイングランド代表のユニフォーム以外に求めるものは何もない。

酒をやめて代表に復帰したい。 何もかもをEURO1996の頃のプレーからはじめたい、と言った。

ツꀀ

FA役員は長い間電話の向こうで黙っていた。

まるで世界中の細かい雨が世界中の芝生に振っているようなそんな沈黙が続いた。

僕はその間ガラス窓にずっと額を押し付けて目を閉じていた。

それからやがてFA役員が口を開いた。『君、今どこにいるんだ?』と彼は静かな声で言った。

僕は今どこにいるのだ?

僕は受話器を持ったまま顔を上げ、電話の周りをぐるりと見まわしてみた。

僕は今どこにいるのだ?でもそこがどこなのか僕にはわからなかった。

見当もつかなかった。 いったいここはどこなんだ?僕の目に映るのはいずこへともなく歩きすぎていく白衣の看護士の姿だけだった。

僕は精神病院のアル中病棟のまん中からFAを呼びつづけていた。

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■ベッカム

139 ベッカム[sage] 09/05/27 21:54 ID:WQ99mq26

僕はイングランド代表のことを考えないように努めた。

僕はヴィクトリアの体を抱きしめ、顔を見て、ヴィクトリアのことだけを考えた。

僕はヴィクトリアの唇と喉と乳首に口づけした。

そしてヴィクトリアの体の中に射精した。

射精し終わったあとも、僕はそのままずっと彼女の体を抱きしめていた。

『ねえ、どうかしたの?』とヴィクトリアは僕の顔を見て言った。

『今日監督と何かあったの?』

『何もないよ』と僕は言った。

『まったく何もない。でもしばらくの間こうしていたいんだ。』

『いいわ』と彼女は言った。

そして僕を中に入れたまま僕の体をじっと強く抱きしめていてくれた。

僕は目を閉じて、自分がどこかに行ってしまわないように彼女に僕の体をおしつけていた。

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■ダイブ

151 名無しが急に来たので[sage] 09/08/04 21:43 ID:m7oAoFzY

「ひとつ質問していいかい?」と主審は言う。

「もちろん」

「あなたが相手ゴール前でDFに寄せられて倒れたとする。ひとつの仮定として」

「ひとつの仮定として」

「ひとつの仮定として。そしてその上で『あなた今の故意に倒れたでしょう?』と質問したとする。仮定として」

「仮定として」

「そうしたらあなたは正直にイエスと返事すると思う?」

きみはそれについて少し考える。

ツꀀ

「しないと思います。たぶんノーって言うでしょうね」ときみは言う。

「どうして?」

「ファールが取れればPKやフリーキックがもらえるから」

「それが戦術みたいなもの?」

「一種の」

「でも、『それには答えられない』というのが正しい答え方じゃないの?もしそれがレフェリングに関わるなら」

ツꀀ

きみは言う。「でも、もし私が『それには答えられない』と言ったとしたら、前後関係からして、イエスと言ったのと事実上同じことになってしまう。そうでしょう?それは未必の故意になる」

ツꀀ

「だからいずれにしても、答えはノーなんだね?」

「理論的には」

「やれやれ」 そういって彼はイエローカードを突きつけてきた。

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ワンダーキッド

97 名無しが急に来たので[sage] 08/10/27 19:30 ID:ZREHWsfY

引退の潮時かもしれない、とオーウェンは思う。

代表で初めてゴールを決めたのは十八の歳だ。何十ものゴール、

何百ものマスコミ、何千万ポンドのオファーが、まるではしけに

打ち寄せる波のようにやって来ては去っていった。

二十八歳...、引退するには悪くない歳だ。気の利いた人間なら大学を出て銀行の

貸付け係でもやっている歳だ。

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