過去8回のリーグ優勝経験を持ち、最近では1994-1995シーズン、2000-2001シーズンのリーグ・アンを制したFCナント。元々育成で名高いこのチームは、今まで様々な名選手を生み出してきた。現在マルセイユの監督を務めるディディエ・デシャンや、元代表DFマルセル・デサイー。近年ではミカエル・ランドロー、オリヴィエ・モンテリュビオ、エリック・キャリエール、ジェレミー・トゥラランを輩出している。フランスではトップクラスの名門チームと言って良いだろう。

栄光の1994-1995シーズン、2000-2001シーズン当時の主なメンバーを振り返ってみよう。

1994-1995シーズン

名前 Pos 出場 ゴール 国籍 現在
Dominique Casagrande GK 20 0 France コメンテーター
David Marraud GK 14 0 France コーチ業/ナント(GKコーチ、アシスタント)、 コニャック
Eddy Capron DF 30 1 France コーチ業/ナント(ユース)
Eric Decroix DF 35 0 France コーチ業/タイのサッカーアカデミー
Lourent Guyot DF 8 0 France コーチ業/現ブローニュ
Serge Le Dizet DF 37 0 France コーチ業/現ブローニュ(アシスタントコーチ)、元ナント
Benoit Cauet MF 25 1 France コメンテーター&コーチ業/インテル(ユース)
Jean-Michel Ferri MF 33 1 France フロント業/FCフェイザン
Christian Karenbeu MF 34 3 France 実業家など
Claude Makelele MF 36 3 France パリ・サンジェルマン
Japhet N'Doram MF 32 12 Chad コーチ業/元ナント(アシスタントコーチ)、元モナコ(技術スタッフ)
Reynald Pedros MF 32 5 France コーチ業/サン・プリヴェ・サンティレル
Christophe Pignol MF 30 2 France 活動家
Patrice Loko FW 37 22 France メディア関係
Nicolas Ouedec FW 34 18 France コーチ業/元ナント(アシスタントコーチ)
Samson Siasia FW 13 0 Nigeria コーチ業/元ナイジェリア(U-20、U-23)

2000-2001シーズン

名前 Pos 出場 ゴール 国籍 現在
Hassan Ahamada FW 12 0 France ヴァンヌ
Sylvain Armand DF 23 2 France パリ・サンジェルマン
Mathieu Berson MF 28 0 France トゥールーズ
Eric Carriere MF 33 5 France ディジョン
Wilfried Dalmat FW 1 0 France スタンダール・リエージュ
Frederic Da Rocha FW 31 4 France ブローニュ
Pascal Delhommeau DF 9 0 France ヴァンヌ
Yves Deroff MF 7 0 France ギャンガン
Nestor Fabri DF 29 4 Argentina 学生
Nicolas Gillet DF 27 1 France ル・アーヴル
Willy Grondin GK 1 0 France パリ・サンジェルマン
Mickael Landreau GK 33 0 France リール
Nicolas Laspalles DF 30 0 France コーチ業/ギャンガン(ユース)
Mario Silva DF 20 0 Portugal 無所属
Viorel Moldovan FW 23 11 Romania コーチ業/ブラショフ(監督)
Olivier Monterrubio FW 22 12 France ランス
Salomon Olembe FW 30 4 Cameroon ラリッサ
Sebastien Piocelle MF 1 0 France アルル
Nicolas Savinaud MF 25 2 France カルケテュー
Alioume Toure FW 15 0 France パリFC
Marama Vahirua FW 15 7 France ロリアン
Stephane Ziani MF 31 4 France コーチ業/元リブルネ・サン・スーラン(監督)

フランス代表クラスの選手が目白押しとは言えないが、トップレベルの資金力とは言えない中で優秀な駒が揃っていた。1994-1995シーズンの出世株はもちろんクロード・マケレレとクリスティアン・カランブーだ。両者ともにこの後レアル・マドリーに移籍して活躍。彼らほどではないが、フランス代表で一時期活躍したパトリス・ロコ、イタリアに移籍しインテルでプレーしたベノワ・コウエも有名だろう。2000-2001シーズンはその後ステップアップした選手はいないが、監督を務めていたレイナル・ドゥヌエ(現在は解説者を務めている)は2002-2003シーズンにレアル・ソシエダをリーガ・エスパニョーラ2位に引き上げたことで有名だ。




その名門チームが、今季はなんと2部で苦しんでいる。序盤戦こそまずまずの成績を残していたが、秋以降の成績はまさに泥沼。22試合で5勝4分け13敗と、2部でダントツの予算規模を持つクラブとしてはあまりにも情けない結果を残し、早々に昇格争いから脱落。冬に補強したルジュヌも期待に応えられず、大きな改善には結びつかなかった。

前半戦のメインフォーメーション

冬の移籍後

その原因となった最たるものは、最終ラインのタレント不足。中盤や前線に比べて能力が劣る選手が多く、特にボール保持時のビルドアップ、単純に放り込まれるボールに対しての処理、裏のスペースをカバーする能力に大きな問題を抱えている。アブドゥン、ダルビオンなど優秀な中盤の攻撃力を生かすためには自分たちでゲームを作っていく必要があるが、ボールキープすればパスミスでピンチを生み、ラインを上げればカウンターで簡単に裏を破られてしまう。自分たちの強みを生かすためのプレーが、同時に自分たちの弱みを表面化することにも繋がるというアンバランスさ。これが今季の最大の弱点となり、失点は実にリーグワースト2位になってしまっているのだ。

中盤と前線にはリーグ・アンでも十分に活躍できる戦力が揃っている。トップは、レンジャースやボルドーで実績を重ねたベテランFWダルシュヴィーユを中心に、昨季ナンシーでプレーしていたモロッコ代表選手ゼルカ、元カメルーンU-23代表ベカメンガ、マリ代表のテネマ・エンディアイと魅力的な面子だ。中盤にはアルジェリア代表のアブドゥン、オセールからレンタル中のルジュヌ、ドリブルもパスも巧みでサイドでも中でもプレーできる万能戦士ダルビオン、優れたパサーであるデ・フレイタス、献身的なプレーが持ち味のセネガル代表パペ・マリック・バ、若手ボランチのヴァンキュールとジロボジ。

だからこそ、彼らを十分に支えることが出来ない最終ラインの弱さにはもどかしさを感じるところ。ナントは伝統的に下部組織重視とパスサッカーを標榜してきたチームであるが、ユースからはトゥララン(現リヨン)やパイェット(現サンテティエンヌ)以降目立った選手を輩出できておらず、昨季は降格を免れるためカウンターを得意とするエリ・ボウを監督として迎えるなど、戦術のポリシーすらも崩壊し始めているのではないかと感じられる。予算の面を考えても、来季は必ず1部昇格を手にしなければならない。再びカナリアカラーのユニフォームを欧州の舞台で見られる日を心待ちにしているファンは多いはず。来季こそ、その期待に応えたいところなのだが……。

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