ふと、辺りを見回してみると、周囲がすっかり秋色に覆われていたことに気づいた。自宅付近の学校では、子供たちが一大イベントに向け、毎日のように練習やリハーサルを繰り返している。この時期に訪れる少年時代の大イベント、運動会である。
先日、運動場での練習風景を眺めていたら、ある違和感を覚えた。正面に立つ校長を前に小学生たちが隊列を作っていたのだが、外から見ると、その列はあまりにも凸凹であった。「整列=背の順」で育った私にとっては何か気持ち悪い感覚を覚えたのだが、今の教育では「背の順」はタブーになりつつあるようで、“背で優劣を決めること=差別”と考える者も多いようだ。たしかに、「背の順」の廃止によって、どこの学校でも当たり前だった「チビ!!チビ!!」という悪口を発端としたいじめは減少傾向にあるようで、この流れを喜ぶ保護者の声も聞いたことがある。 つまり、「当たり前」のこと、言い換えれば、「一般常識」というものは時代と共に刻々と変化を遂げるということなのだろう。
さて、数日前のことだっただろうか。親善試合に招集される日本代表が発表となり、オランダ遠征は負傷のために欠場した森本も再び代表に参加することとなった。昨今、カターニア不動のエースストライカーとなり、セリエAの舞台でも堂々たる活躍を見せている、この若きストライカーはあたかも「日本代表の救世主」のようにメディアも報じており、代表合宿初参加となる彼の一声を拾おうと、帰国直後の囲み取材も大盛況だったようである。
しかし、当の森本の発言は一部のメディアにとっては、やや薄味だったらしい。「知らない人たちが多いのでうまくやりたい」、「自分のもっているものを出して、FWなのでゴールを奪えるように頑張りたい」との話は「優等生発言」と評価され、肩透かしをくらったかのようなリアクションを見せていた。だが、この一連の流れはどうも腑に落ちない。本田のビッグマウスぶりを「良い餌」として狙いをつけると、中村俊輔とのライバル関係をわざと作り上げ、「日本代表に問題児現れる!」と言わんばかりの報道を始めた。本田のビッグマウスを森本にも期待した者達が言うまでもなく彼らであったわけだ。
外野はどの世界でもヒーローとヒールの存在を求めようとするものだが、どう考えても、ここのところの本田&森本報道は納得がいかない。
果たして彼らは日本代表に何を求めているのだろうか?ベスト4の偉業を達成する集団か?もしくは、その集団を壊す異端児か?はたまた、大人しい若年寄か?
型破りな存在を待望しつつ、その存在を破壊する第三者達。彼らこそが、右向け、右の優等生の集団を嫌った張本人である。