地域リーグからJリーグへ―。この理想を掲げてクラブ運営をするチームは日本中に数多くある。その中でも衆目を引く成長を遂げながら下部カテゴリーから駆け上がる社会人チームが存在する。
東京都葛飾区を拠点とする関東サッカーリーグ1部南葛SCは、世界的なサッカー漫画『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生がオーナー兼代表取締役社長を務め、「ボールはともだち」をモットーにJリーグ入りを目指している。
2018年にスポーツジャーナリスト、出版業経営者からサッカークラブ運営のゼネラルマネージャーとなった岩本義弘代表取締役専務兼GM(以後岩本GM)にインタビューを実施。
連載インタビュー第2回は日本が誇る名将・風間八宏監督招へいの経緯を明かした。
(取材・撮影・構成 高橋アオ)
取材日2024年5月25日
風間監督招へいの経緯
昨年11月7日に南葛SCは、2024年シーズンから風間監督がトップチームの指揮官、クラブ全体のテクニカルダイレクターに就任すると発表した。風間監督は日本屈指の指導者であり、過去に桐蔭横浜大、筑波大を率いて数多くのプロ選手を輩出し、プロクラブでは川崎フロンターレ、名古屋グランパスを指揮した。特に川崎ではパスサッカーの土台作りに着手し、後にJ1を4度制覇した川崎黄金期の基盤を作った。
日本でも屈指の指導者と称される風間監督をなぜ南葛SCが招へいできたのか。経緯を岩本GMに尋ねた。
――風間監督との契約の経緯を教えてください。
2023年、関東リーグ1部からJFL(日本フットボールリーグ)への昇格が難しくなった7月の終わりから8月の頭にかけて、高橋先生と翌年以降の体制について話し合いました。
クラブとして目指すサッカースタイルについては、「ボールはともだち」というコンセプトが変わることはありません。ただ現実問題として、高橋先生にはこう伝えました。「ボールを大事にするサッカーをピッチで体現できているクラブは、日本全国を見渡しても決して多くありません。だからといって、スペイン人監督を連れてくれば必ずうまくいくというわけでもないと思っています」 以前から高橋先生は、バルセロナのスタイルやスペインサッカーに強い関心を持っています。とはいえ、今述べたようにスペイン人監督をこの地域リーグにアジャストさせること、さらには言語や費用の問題をクリアすることはとても難しい。 では日本人の指導者の中で、「ボールはともだち」を実現させられるのは誰なのか。風間さんがその最高峰であることは言うまでもないでしょう。幸いにも僕は風間さんと20年来の付き合いがありましたので、高橋先生の許可を得た上で、風間さんに南葛SCの監督就任に関するオファーをすることにしました。